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東大大学院生が語る、エンジニア学生の就活スタイルと安定志向について

この記事を書いた人東京大学大学院 金山さん

はじめまして。東京大学大学院生の金山と申します。この記事では、大学院生の実態と、現役の学生の目線から見たエンジニア就職活動についてお話します。特に、普段大学院生と接する機会が無く、生活スタイルや志向性がいまいち分からない、という方は是非読んでみてください。


大学院生はとにかく時間がない

まずは、時間感覚の話です。この話は、情報系に限らずほとんどの大学院生に当てはまると思います。

大学院生は、本業である研究で成果を出すことを第一目標としつつ、授業やバイト、1人暮らしの場合は家事などを両立する必要があります。特に、修士課程の1年生は外国人留学生のチュータや授業のティーチング・アシスタント、学部生の教育、その他研究室を円滑に運営するための仕事を任される場合が多いです。

すなわち、大学院生が就職活動をする際は、これらの時間に加えてさらに就活の時間を捻出する必要があります。この点は、学部生の就活と大きく異なる点かもしれません。

大学院生の忙しさは、社会人の忙しさと性質が異なる

大学院生の時間感覚をより深掘りするために、社会人の時間の使い方と比べてみます。社会人から見れば、上記の内容を全て考慮しても社会人のほうがよっぽど忙しいと思うかもしれません。自分もそう思います。拘束時間という面では、社会人は平日の朝から晩まで会社にいるため、自由な時間は学生に比べとても少ないと思います。逆に、大学院生は基本的には自分のペースで研究を進めれば良いので、実際に拘束される時間はそこまで多くありません。(生物学や化学系の研究室では毎日コアタイムがあるところも多いですが、情報系に関してはコアタイムもあまりありません。)

しかしながら、「拘束時間が短い=時間に余裕がある」、では決してありません。大学院生は常に「研究」という得体の知れない強敵と戦っているため、いくら時間があっても足りないと感じます。実際、「研究するために修士課程に入って半年経ったけど、色々手を出してしまったせいで結局まだ何一つ研究できていない…」と嘆いている大学院生を何人も見かけました。大学院生は、自分の研究が思うように進まないことに対して、常に焦りを抱いています。アカデミアにおける研究は特に、「時間投入量と成果の相関があまり無い」という特殊性を持っているので、社会人の言う「時間が無い」と院生の言う「時間が無い」の性質が異なるわけです。

なぜ情報系の院生は大手ナビを使わないのか?

この実態がわかると、例えば 「ITエンジニア採用と総合職採用の違い」に書かれている、「ITエンジニア学生は大手ナビを使わない」の理由も自ずと理解できると思います。何十社も応募して何十通もエントリーシートを書いて何度も面接に足を運ぶのは時間がもったいないからです。そんな時間があったらもっと自分の研究を進めています。大学院生は、就活をするために大学院に入ったわけではないのです。(もちろんそういう人もいますが。)

そうなってくると必然的に、信頼できる知り合いから直接情報を仕入れる、もしくは効率の良い就活イベントに参加して一気に情報を集める、などの就活スタイルになります。(これは宣伝になってしまいますが、自分は「逆求人フェスティバル」で様々な会社から、聞きたい話をとても効率よく聞くことができました。こういうイベントがもっともっと増えてくれるといいですね。)

「安定志向」の就活生

さて、話を大きく変えて、情報系大学院生はどのような企業を選ぶか?という話に移ります。

就活生の企業選びにおける嗜好性を、「安定志向かどうか」という軸で整理してみます。安定志向な学生が重視するポイントは、大企業であること・失業の心配がないこと・倒産の心配がないこと・年齢が上がれば給料も確実に上がっていくこと・社会的にネームバリューがあること、などが典型例です。そして、少なくとも日本においてはこのような安定志向の学生群が大半を占めており、就活生はみな上記のような条件を満たす東証一部上場企業に殺到しているのが現状です。

しかしながら、最近の就活生、特にエンジニア学生の場合は、この「安定」への考え方が大きく変わりつつあるように感じます。

エンジニア学生が考える「安定」とは?

人間の寿命より会社の寿命のほうが短いと言われる昨今、一度入った会社で死ぬまで安定して雇用してもらえる保証はどこにもありません。特に自分たちの世代は、日本の名だたる大手メーカーが苦戦する様子を間近で見てきました。その結果、「万が一自分の勤めている会社が無くなっても、他で生きていくだけの能力がある」という状態を、新たな「安定」と捉える人が増えてきています。従来のような安定志向を「静的な安定志向」と呼ぶなら、このような新たな安定志向は「動的な安定志向」と呼べるかもしれません。特にエンジニアの場合、ある技術を身に付けたらどの企業でも場所を問わず役立つ場合も多いため、エンジニア志望の学生の間では「動的な安定志向」を持って就活をしている人が特に多い印象です。

「動的安定志向」には何が刺さるのだろうか

さて、「動的な安定志向」を価値基準として持っている就活生にとって、重要になってくるのは、「その企業でどのような能力を付けることが出来るか」です。「この企業に入ると数年後自分は何ができる人間になっているか」という具体的なイメージがわくこと、これがとても重要です。

これはもはや、現場のエンジニアと話をする以外に方法がありません。そのエンジニアの経歴や現在の仕事を自分自身と重ね合わせて、イメージがより具体化できるかが重要です。もっと言えば、新卒入社3年目、くらいのエンジニアと会うことができるとよりイメージをつかみやすいかと思います。こうして自分自身と重ね合わせることにより、ほんとうに「動的安定」を達成できるかどうかを考える必要があります。次回の逆求人フェスティバルには人事だけで参加するのではなく、是非そういった年の近いエンジニアも連れて参加してみてください。

中間地点にこそチャンスがある

ところで、「静的な安定志向」と「動的な安定志向」の2つの考え方を挙げましたが、エンジニア学生が必ずどちらかに分類できるわけではなく、ほとんどはその中間地点にいるように思います。今はまだ価値観の過渡期なのです。よく聞くのが、「自分自身に実力が付けられる企業に行ったほうがいい気がしているが、親や周りの人はネームバリューのある大企業に行くことを薦めてくるので、どうしたらいいか迷っている」というケースです。また、「大企業から小規模な企業に転職するのは容易だが、逆は難しい」という通説を根拠なく信じている人もたくさんいます。そういう人には、自分自身に実力をつけることの重要性を説明して上手く誘導した上で、この企業に入社すると具体的にどんなエンジニアになれるかを知ってもらうのが効果的かと思います。

以上、2つの切り口から、情報系院生の就職活動の実態について説明しました。自分自身が情報系院生なのでこのような限定的な言い方になりましたが、実際にはもっと応用可能な範囲は広いかもしれません。例えば、情報系に限らない院生全体に当てはまる面や、学部生にも当てはまる話もあると思います。

また、上記の話はいずれも、客観的な統計情報などに基づいたものではありません。(したがって、出典も特にありません。)自分自身や、周りの同じく情報系院生の友人や先輩の話を参考にしています。非常に主観的な内容ですが、生の声であることは間違いないので、少しでも参考になれば幸いです。

この記事を書いた人東京大学大学院 金山さん
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