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【エンジニア学生 深セン派遣プロジェクト レポートvol.4】Tech Quest -Shenzhen-報告

この記事を書いた人Yuki Otsuka / 京都大学大学院情報学研究科の学生

2018年11月にITエンジニア学生を中国のIT都市・深センに派遣するプロジェクトを実施しました。派遣された学生の現地調査レポート第4弾を公開いたします。


今回は株式会社ジースタイラスさんの企画Tech Quest -Shenzhen-で深センを訪問したので、その活動報告とレポートを書きたいと思います。
主に活動報告はどの様な活動をしたか(ほぼ日記)を書いて、レポートに感じたことを書きました。

今後はインターンなどで深センを訪問する様な企画もシリコンバレー同様増えてくると思うので、その参考になればと思っています。

1. 活動報告1日目

深セン1日目の活動報告(日記)です。
1日目はざっくり

・Mobikeで深セン散策
・テンセント訪問

という感じでした!

Mobikeで深セン散策

ホテルを出ると早速大量のシェアリング自転車に遭遇したので、1日目は自転車で深センの街を散策することにしました。

現在深センではテンセント系のmobikeとアリババ系のofoの二つがメインでしたが、ofoには倒産報道が出ていたり、デポジットが帰ってこないといった報道があったので、今回はmobikeを利用しました。
最低500円のデポジットで一回の乗車は16円~32円なので、30回くらいは乗れます。

お昼ご飯

これで300円くらいなので、かなり安いです。

モール

15年前はこんな綺麗なモールはなかったです。
中にはシャオミやファーウェイ、イオンなどが入っていました。

なんて書いてあるか正確にはわからないですが、QRコード決済と連携してなんか便利になっていることはわかります。こうやってQRコード決済のエコシステムができて、ただ財布を持ち歩かなくていいという以上の付加価値がQRコード決済に生まれてきているなと感じます。個人的にはただの決済手段であれば、Apple Payの方が早くて便利ですが、このようにアプリとの連携になるとQRの強みが出てくるのかなと感じます。

僕は今回の旅行中は残念ながらwechatペイが使えず(ちょっと前までは行けてたみたいですが、また中国の銀行口座がないと友達からの送金も受け取れなくなってました...)毎回現金を渡して、嫌な顔されてました。
本当に現金を使う文化が消えているようで、お釣りを出すために店の奥まで行って取ってくるみたいなこともありました。

この後は深セン科学館に行ってその後は華強北電気街へ

ハードウェアのシリコンバレーと言われるだけあって、電気街は深センを象徴する様な場所で、秋葉原のようなエリアです。
1日目は時間の関係で1店舗だけ見ましたが、何が何だかわからなかったです。

スマホの修理部品関連があちこちで売られてました

平日の昼すごいお客さん来てます

夜はテンセントの社員さんとアポを取っていたので、南山区へ
南山区は科技园というシリコンバレーの様な意味を持つエリアがあり、IT企業が乱立しています。

共産党と一緒に起業しよう、イノベーションを起こそうというメッセージがエリアのいたるところにありました。

中国検索エンジン最王手の百度やWeChatなどを運営するIT企業の巨大なオフィスビルがありました。

テンセント訪問

夜はテンセントの社員食堂でご飯を食べながら、テンセントのエンジニア、PM(プロダクトマネージャー)とお話させていただきました。
テンセントでは新入社員がPMをやることも普通にあったり、エンジニアの方は10時から23時勤務がよくあると聞いたり、驚く事ばかりでした。週7日働くこともあるとか。深センのエンジニアの労働環境は996, 997(朝9時から夜9時まで週7日)とか言われたりしますが、それくらい今の時期は忙しいそうです。
ちなみに22時をすぎると会社からタクシー代が出るそうです。

オフィスの中の写真は取れなかったですが、めちゃくちゃ広かったです。
ビルの中にバスケットコートがあったり。。
同じプログラムで先に深センに行った方がテンセントのオフィスの中を詳しくレポートしていたので、こちらを。

社食のココナッツチキン。黒い鳥の手が入ってました。

食事後はエンジニアとPMの方が仕事に戻られたので、日本人の社員の方と3時間ほどお話させていただきました。

日本人の方と深センでの働き方や、日本企業と仕事をする中で感じたことなど、いろいろお話を伺いました。

テンセントの企業訪問ができたことはかなりいい経験にも刺激にもなりました。テンセントの社員の方には感謝しかないです。

次は2日目の活動報告です。

2. 活動報告2日目

2日目は老街や電気街の散策をしました。

老街

老街は深圳の服問屋街で、若者の街という感じです。
日本でいうと原宿の様な雰囲気でチーズドックや謎のお菓子とかも屋台で売られていました。

めちゃくちゃ安い服や、明らかにコピー品だなっていう商品がたくさんあります。B級品を探すなら、結構面白い街でした。

お昼ご飯は300円くらいのスープビーフン?のようなもの。

電気街

お昼ご飯の後は、1日目も少し訪れた華強北電気街へ

深センの歩き方によると、ここのお店は11時に開いて18時には閉まるらしいです。忙しい。
ざっくり理解するだけでも20棟くらいあるビルをまわる必要があり、買い物をしなくても1日はかかるらしいです。

华强广场というビル

トイドローンや、スマートホーム、家庭用ロボットのショールームなど、この建物はスマホの部品と違い、結構完成されたものが多く売っていて、一部観光客向けのお店もあり、楽しかったです。

電気街はハードウェアに詳しい人と一緒に来るともっと面白いんだろうなと感じます。。。(写真はあまりとってはいけないようで、写真は少ないです)

十分に電気街を堪能したところで、夜ご飯。

死ぬほど辛かったです。

では次は3日目です。

3. 活動報告3日目

3日目は

1. 南方科技大学
2. SIMM 2019 - The 20th Shenzhen International Machinery Manufacturing Industry Exhibition
3. DJI展示場
4. 羅湖商業城

と行った感じで盛りだくさんでした。

南方科技大学

同じタイミングで深センに旅行に来ている友達が南方科技大学の学生とアポをとてくれたので、9時に南方科技大学の正門へ

案内してくれた方は、現在学部3年生で、情報学を専攻し、大学院からは京都大学の大学院を目指しているそうです。

南方科技大学は2011年に大学が設置されたばかりの歴史の浅い大学です。

図書館。でかい。

中では午前中にも関わらず多くの人が勉強していました。

学生寮。一年間の家賃は20000円程度らしいです。

Top10の教授用の寮。世界中から著名な教授を集めているそうです。
リゾートみたいでした。

お昼は学食で。この量で180円です。

深センの大学なので、ハードウェアに関する専攻が人気なのかと思っていたのですが、今はもう圧倒的にソフトウェアの方が人気だそうです。

授業では学部の時からandroidアプリを作ったり、webアプリを作ったりしていて、かつ情報学の基本もやっているそうです。授業も各講義に中国語と英語の講義があり、どちらを選択してもよいとのこと。

また、情報学の分野では博士まで取っていないとなかなか就職できないそうで、案内してくれた方も博士までとるそうです。

SIMM 2019 - The 20th Shenzhen International Machinery Manufacturing Industry Exhibition

午後からはSIMMというThe 20th Shenzhen International Machinery Manufacturing Industry Exhibitionに行ってきました。

すごい人で会場も幕張メッセサイズです。

日本からも三菱電機とかが出店してました。
僕は主にスマートファクトリーのロボットを見てきました。

ハードウェアといえど、機械学習等をつかってソフトウェアでも差別化しているところが多かったです。

DJI展示場

SIMMの後はDJIというドローン界の巨人の展示会に行ってきました。

DJIは消費者向けドローンで世界シェア7割以上と言われている企業です。

中の展示品

手をかざしてドローンを操作していました。
周りの人が手をかざしても一切反応してなかったので、ちゃんとトラッキングできているのでしょうか。

羅湖商業城

1日の終わりは羅湖にきました。ここは昔香港に住んでいた頃よく偽物のゲームボーイのソフトを買いに来てた記憶があります。香港との国境付近に位置し、観光客に非常に人気のあるスポットです。

夜ご飯は深圳の飲茶ならここ。と言われる丹桂軒に来ました。

楽しい1日でした。

次は4日目です。

4. 活動報告4日目

4日目は

1. PCBGogoのオフィス訪問
2. 深セン書城中心城

という感じでした。

PCBGogoオフィス訪問 / ニコ技深圳コミュニティの方々

ニコ技深圳コミュニティというコミュニティを通じて、PCBGogoというオフィスを訪問できる機会があったので、参加させていただきました。
メンバーはニコ技深圳コミュニティの管理人の高須さん、日本のベンチャー企業のハードウェアエンジニアの方、香港中文大学の博士候補の方の四人でした。
PCBGogoとはプリント基盤の製造・販売を行う会社で、試作品と小ロットの生産、高品質を強みにしています。最近では日本での販売にも力を入れていて、日本のサイトも充実しているそうです。

ほとんど商談みたいな感じだったので、完全に僕は場違いでしたが、話はとても勉強になりました。

その後は時間があったので、四人で駅の近くでお茶をしました。

最近のハードウェアの動向や、スタートアップのお話などとても参考になるお話がたくさん聞けました。詳しい内容はレポートの中で簡単に紹介したいと思います。

高須さんにはこのような場をいただき感謝しかないです。
深センに行かれる方は、
1. ニコ技深圳コミュニティ(高須さん運営)
2. 深センの歩き方(高須さん著)
をぜひ参考にしてください。

深セン書城中心城

お茶の後はオススメしていただいた深セン書城中心城に行きました。

東京最大の書店池袋ジュンク堂の6倍の書店で、アジアで一番大きい書店のようです。
地べたにすわって勉強している方がたくさんいました。

コンピュータサイエンス系はPythonの本が多かったイメージです。

高須さんのお話によると、3ヶ月に一回は定点観測をしているが、置いている本のレベルはどんどん高くなっているそうです。
少し前までは、二、三日後にはお金になるiphoneの修理方法のような本が多く、人気だったのに対し、最近では1、2年後にお金になるような本格的な本が多くなってきているそうです。
やはり深センは変化が早いみたいです。

深セン4日間とても楽しかったです。
最後はレポートです。

5. まとめレポート

この記事ではTech Quest -Shenzhen-のアウトプットレポートとして、4日間で感じたことをまとめたいと思います。

1. 深センのイノベーションの変遷
2. QRコード決済について
3. シェアリング自転車について

深センについてのデータや情報などは、先に深センに行ってレポートを書いている方の記事が参考になるので、参照ください。
http://balius-1064.hatenablog.com/entry/2019/02/14/000617

簡単に基本的な深センの歴史について触れておくと、
- 1970年代までは小さな漁村で人口も30万人程度
- 1980年代に経済特別区に指定され、急速な発展
- 2008年に金融危機により、外資企業が撤退
=> 大衆による起業、万人によるイノベーションというスローガンが登場
=> 労働集約産業から、ハイテク産業への転換
という感じで今に至ります。

イノベーションの変遷

僕はこの四日間でハードウェアのシリコンバレーと言われる深センを過ごして、深センのイノベーションがものづくりから価値づくりに移行してきていると感じたので、そこについてまとめたいと思います。
ですが、深センでのイノベーションの前に、まずソフトウェアのイノベーションについて書きたいと思います。

ソフトウェアのイノベーション

ソフトウェアのイノベーションはインターネットによってもたらされます。
インターネットが登場する前は、サービスを立ち上げるために、ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアと多くのレイヤーに気を取られ、一つのプロダクトを作るのに多額の資金が必要でした。
資金を集めるために、MBAを持つ人が計画をたて、投資家からお金をもらって、エンジニアを雇ってプロダクトを作っていました。

一方インターネット登場後は、クラウドサービスの登場やコミュニケーションコストの低下、ムーアの法則によって、ソフトウェア業界においては新規事業を立ち上げるコストはほぼゼロになりました。
このことにより、アイデアを形にするまでのコストはほとんどなくなり、大企業から学生や起業家にイノベーションの場が移行したと言われています。

ハードウェアのイノベーション

そして深センという場で、ソフトウェアのイノベーションと同じことがハードウェアの世界でも起きました。オープンなIPシステムによって、ものはコピーされる前提で作られ、ハードウェアを作る初期コストがゼロに近づき、試作や流通、製造のコストが下がり、イノベーションの場がソフトウェア同様学生や起業家へと移行しました。

深センでは、1日目の記事で紹介した電気街にあるように、ウェブサイトを作るかようにスマホを作ります。とりあえず模倣して、あるいは本を読んで作って、露店で売り、他の人が作ったものをみて、また作り、売るといったことを繰り返します。まさにソフトウェアにおけるアジャイル開発が、深センではハードウェアの世界で起きています。

ハードウェア✖︎ソフトウェア

今回の滞在で、僕は深センが単なるコピー都市、ものづくり、ハードウェアの街から変化し、価値づくりを行う都市になってきていると感じました。

ものを簡単にコピーできるということは、逆に簡単にコピーされるということでもあります。そして、簡単にコピーされるものでは長期的な利益は見込めません。例えば、スマホケースに自撮り棒がついたようなものはイスラエル人がデザインに一年かけ、やっとのことで市場に出しましたが、その数日後にはコピーされ、ネットで似たような商品が安く売られるということもありました。長期的な利益を得るためには、他社が真似できない差別化が求められるようになったのです。

そして近年DeepLearningやその周辺の盛んな研究によって、AIと呼ばれる領域が盛り上がっています。僕は今回の視察で、このソフトの技術とハードウェアのエコシステムの融合によって、深センのものづくりは次のフェーズに移行していると感じました。

AIという領域では研究ではアメリカが常に主導してきました。しかし、社会実装という面では、以下の理由で中国・深センが果たす役割、優位性というのは大きいと考えられます。

1. 市場規模の大きさから、十分すぎるデータ量が得られる
2. プライバシーの観点から欧米諸国がデータの利用に制限がかかる
3. ハードウェアのエコシステムから社会実装が早い
4. エンジニアの豊富な労働時間(997という9時から9時まで週7日間という言葉があるくらい)

そして実際に今回の視察でその傾向は節々で感じることができました。
南方科技大学の学生もソフトウェアへの興味関心はいまやハードウェア以上でしたし、ニコ技深圳コミュニティの管理人の高須さん曰く、深センの本屋もほんの数年前までは2, 3日後にはお金になるiphoneの直し方の本が多かったのが、2, 3年後にお金になるようなレベルの高い技術の本が置かれ、みんながよく手にとるようになったそうです。
また、PBBGogoに行った際も、このようなハードウェアの製造においても、設計書から実際の配線を決める部分を画像認識を用いて他社と差別化しようとしているという企業のお話も聞きました。

自動販売機に顔認識で購入する機能が実装されていましたが、まさにソフトウェアと、ハードウェアのエコシステムによって素早く社会実装された例かもしれません。

SIMMに行った際も各社、AIを用いて他社と差別化していることが伺えます。

DJIのドローンはまさにソフトウェアとハードウェア両方においてうまく差別化をはかっているものかもしれません。こちらのドローンは手をかざして、ドローンを操作するというものでした。

このように、今後はさらにソフトウェアとハードウェアのエコシステムを生かして、素早く社会実装し、さらに社会からのフィードバックを得ながら、他の企業に真似できないようなサービスや製品がどんどん生まれてくるのかなと感じました。

QRコード決済

深センにきて、QRコード決済については少し感じることがあったので 、この話題についても触れようと思います。

まず、噂通り深センではQRコード決済(送金)が主流で本当に現金が使われなくなっていました。深センに住んでいる人、本当に財布持ち歩いていません。今回僕は中国の銀行口座がなく、wechat pay が使えなかったので、現金生活を送りましたが、本当に至る所でまじか。という顔をされました。 わざわざ裏から現金の入った箱を取ってきた店までありました。

日本のQR決済と深センのQR体験

僕は個人的には今日本で特にQR決済をする人間ではありません。基本的にはSuicaやIDなど、ApplePayを使います。

なぜかというと、QRコード決済はアプリの奥にあり、「スマホのロックを解除して、たくさんあるアプリの中から、決済アプリを選んで、QRコードを表示する」のがめんどくさいからです。ApplePayはかざすだけです。

しかし、深センにきた時、僕はもし深センでApplePayが使えたとしても、深センではQRコードを使うかなと感じました。
なぜかというと、深センではQRコードはただの決済手段ではなく、一連のサービス体験を提供するものに決済もついてるという形になっていたからです。
そしてこの体験の提供はApplePayでは不可能で、QRだからこそできることが多いからです。

例えば、とあるレストランでは、テーブルに置かれたQRコードを読み取ると、メニューが表示され、そのまま選んで決済までできるそうです。
これができると、

1. みんなでメニューの取り合いをしなくていい
2. 最後に別々でお会計できますか?とか聞かなくていい

といったメリットがあります。

つまり、決済の場面だけを見るとApplePayなどの方が早いかもしれませんが、前後の体験を充実させようと思うと、QRの強みが活かせると思います。

今はそもそもQRコード決済そのものを広めるために各社頑張っていますが、その傍ら、QR体験に関するサービスをレストランやホテルで考えておくと面白いうのかなと感じました。

そして、中国のキャッシュレスはQRの先に行こうとしてすらいました。

もうすでに顔認証決済が至る所にありました。コンビニから自動販売機まで。
自動販売機にもうすでに実装されているところはさすが深センと感じるところです。

こういった体験を提供する必要のないコンビニや自動販売機、素早い決済だけを必要とする部分では顔認証を用いるという考えなのでしょうか。

日本で顔認証の決済をやろうと思ったら、すごい議論が起こりそうな気がしますが、深センは社会実装がさすがに早いです。

最後に

今回の深セン視察は株式会社ジースタイラス様の企画で参加させていただきましたが、本当に貴重な体験が多くできました。

帰国後は5日間熱で倒れるなど、いろいろ大変なこともありましたが、総じて貴重な体験ができたと感じています。

現地でもテンセントの社員の方や、ニコ技深圳コミュニティの方、南方科技大学の学生など多くの方にお世話になりました。
ありがとうございました。

この記事を書いた人Yuki Otsuka / 京都大学大学院情報学研究科の学生
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