エンジニア採用コラム

ITエンジニアの採用のコツなどコラムでご紹介

【エンジニア学生 深セン派遣プロジェクト レポートvol.3】中国で大流行中のラッキンコーヒーとは

この記事を書いた人中京大学法学部4年 神谷君

2018年11月にITエンジニア学生を中国のIT都市・深センに派遣するプロジェクトを実施しました。派遣された学生の現地調査レポート第3弾を公開いたします。今回の学生は「中国で大流行中のラッキンコーヒー」をテーマに取り上げました。


1.はじめに

(1)なぜこのテーマを選んだのか

はじめに、なぜこのテーマを私が選んだのか説明いたします。
現在、私はLisa Technologies株式会社にてエンジニアとして長期インターンシップを行なっております。そちらで2018年11月にモバイルアプリである「TOGO」を開発いたしました。

このアプリは、テイクアウトのコーヒーの注文と決済に特化しておりアプリのユーザーとクレジットカードの登録をしておけば店舗とメニュー、受け取り時間を選ぶだけで注文が完了し、あとは店舗に注文したドリンクを受け取りに行くだけといったサービスです。

中国にもラッキンコーヒーといったモバイルオーダー&ペイを利用したTOGOと類似するサービスが存在しているのに加えて、中国の国信証券によると中国人1人あたりのコーヒーの年間消費量はたった4杯しかなかった状況で、どのようにコーヒー文化を創ったのか興味を持ったので、このテーマに決めさせていただきました。

(2)ラッキンコーヒーとは

ラッキンコーヒー(瑞幸咖啡 / luckin coffee)とは、2018年1月に創業した中国の振興コーヒー企業でわずか1年で、中国22都市に2000店舗以上を展開しています。

サービスとしては、スマホからコーヒーを注文して、店舗についたらQRコードをかざしコーヒーを受け取ることができるテイクアウトサービスと、注文したコーヒーを指定した場所に配達してくれるデリバリーサービスがあります。

通常のカフェであればカウンターを通して店員に注文し、金額を支払い、注文した品を受け取りますが、これに対してラッキンコーヒーにはレジがなく、店員に直接注文することはできないのです。
ラッキンコーヒーでは、専用のアプリからのみ注文を受け付けているサービスとなっており、なぜアプリからしか注文できないかは4.面から見るラッキンコーヒーの戦略 (1) インターネットを取り入れたサービスの効率化にて述べさせていただきます。

2.ラッキンコーヒーのサービスを利用してみた

まず私は中国に到着してから、スターバックスを利用してみました。

スターバックスは通常のカフェと同じ注文方法をとっており、まずは注文のために列に並び料金を支払い、注文したコーヒーを受け取るために別の列に再度並ばなければなりません。

スターバックスは中国でも人気のカフェのため、常に行列ができており私はこの時、来店からコーヒーを受け取るまでに5〜10分かかってしまいました。


WeChatPayを利用し、スターバックスのコーヒーを注文

次にラッキンコーヒーを訪れてみたのですが
ラッキンコーヒーを利用するには、中国の電話番号が必要であることがわかりました。

私はラッキンコーヒーの店員に中国の電話番号を持っていないことを伝え、店員の方に私の代わりに注文をしていただきました。


店員にWeChat Payでコーヒーの料金を送金し、代わりに注文を頼んだ。

注文したコーヒーを飲んでみると、先ほど紹介したスターバックスのコーヒーと同じくらい美味しく、料金はスターバックスの1〜2割ほど安かったです。

さらにラッキンコーヒーでは、「初めて買うときは無料」「2杯買うと1杯無料」「5杯買うと5杯無料」など時期に応じてクーポンが配布されています。

私はコーヒーを待っている間、他のお客を観察してみました。
彼らはもちろん中国の電話番号を持っているので、ラッキンコーヒー専用のアプリから注文し店舗に到着したらQRコードをカウンターにスキャンし、コーヒーを受け取っていました。

先ほど私はスターバックスにて来店から商品受け取りまで5〜10分かかったと述べましたが、ラッキンコーヒーに来店した客を見てみると、来店から受け取りまで20秒くらいでした。
これは決してラッキンコーヒーがスターバックスと比較して人気が劣るといった理由ではなくモバイルオーダーを導入したことにより、客の注文が来店前に店舗に通知され、受け取り時間に合わせて店舗がコーヒーを作ることができるからです。


写真は店内の様子。テイクアウト専門店なので、特別広くはない。

3.急速に上昇するマーケットのシェアの背景

(1)中国のコーヒー市場の過去と現在を比較

2015年のコーヒーチェン業界シェアは、スターバックス73.3%、次は麦珈琲(McAfee)の9.3%、3位は2007年進出の英国COSTAの9.0%である。4位は香港資本の太平洋珈琲で3.9%、その他4.5%となっておりました。(高野悠介「中国コーヒー市場でも「星巴克(スタバ)」ダントツ、個人経営は1年で1割以上減」ZUU online, 2017年11月1日 引用) これらのデータからラッキンコーヒーが登場する前の中国のコーヒー市場ではダントツにスターバックスが市場を支配していました。

2016年には中国の珈琲館の数は10万軒を超え、中国のコーヒー市場は大きくなっているように見える一方でこの年に13.5%にあたる店が閉店しています。
つまり中国コーヒー市場はスターバックスが一強であり、個人経営の店舗は厳しい状況に置かれていました。

そんな中国のコーヒー市場の大半を占めていたスターバックスを見てみると1999年に米スターバックスが、北京市の故宮の中に店舗を開いて以来、着実に店舗数を増やしていき2018年段階で中国のスターバックスの店舗数は約3500となっております。さらにスターバックスは、2018年のグローバル投資家交流会の場で、 今後5年間に中国市場での発展ペースを加速させることを発表しており、今後は5年間は毎年、新店舗600店をオープンし、2022年の9月までに大陸内部市場の店舗数を6000店に増やし、都市も230都市に増やすことを述べています。

ではラッキンコーヒーが中国コーヒー市場に現れてからはどうなったか。
1999年、中国で初出店して約20年間をかけてスターバックスの店舗数は約3500店舗であったがラッキンコーヒーはたった1年で約2000店舗を出店しています。

店舗数だけ見てもラッキンコーヒーの中国コーヒー市場の参入におけるインパクトの大きさは顕著に表れていますが、売上に関してもみることができます。2018年の第3・四半期(7月1日まで)決算によると中国の既存店売上高が2%減少しました。中国におけるスターバックスの売上高が減少するのは、1999年出店して以来始めての出来事であったそうです。

(2)ラッキンコーヒーのシェアの拡大

はじめにも記載した通り、ラッキンコーヒーは、2018年1月に創業した中国の新興コーヒー企業で、わずか1年で、中国22都市に2000店舗以上を展開しており、約1200万人の客に8500万杯以上のコーヒーを提供しています。

北京や上海、天津等の13都市から試営業を開始したばかりのコーヒーショップで2018年の5月時点で既に525店舗とものすごい勢いで出店しており、2018年7月に、2億ドルのAラウンド投資を完了し企業価値が10億ドルを超え、2018年12月にはさらに2億ドルのBラウンド投資を完了して、企業価値は22億ドルとなりました。2019年は4,500店舗を目指す発表があったので、たった2年で中国のスターバックスの店舗数を超える予定です。

そんなラッキンコーヒーは、2018年12月時点で約140億円の赤字を出しており、収益化の見通しは示しておりません。しかしながら、ラッキンコーヒーは目先の利益よりも、中国のコーヒー市場のシェアを獲得することが最優先であると述べています。

4.面から見るラッキンコーヒーの戦略

(1)インターネットを取り入れたサービスの効率化

通常のカフェでは、カウンターを通して店員にコーヒーを注文し、金額を支払い、注文したコーヒーを受け取ります。しかし、このカフェのシステムはユーザーが行列に並ぶ必要が生まれるので、好ましいものではありません。注文レジと商品カウンターに並ばなければならず、そして(イートインの場合は)自分自身で席を確保しなければなりません。

既存のカフェにはもう1つ課題があり、本格コーヒーの価格が高いということです。
客が席に座り、仕事をしたり、本を読んだり、ゆっくりするので、席の回転率が悪くなり店舗側はコーヒーの価格を下げることができません。ラッキンコーヒーはこの課題を解決するために、ラッキンコーヒー専用アプリからのみ注文できるシステム(モバイルオーダー&ペイ)を導入しました。

店舗に訪れて店員に直接注文することも、現金で支払うこともできません。
アプリから事前に注文することにより、カウンターに並ぶ必要がなく、商品カウンターに指定された時間に行けばすぐにコーヒーを受け取ることができる。テイクアウトサービスなので、これにより、席の回転率を意識する必要がなくなり、もう1つの課題であったコーヒーの価格を下げることができました。価格を下げることができた要因はもう1つあり、それは在庫管理と発注を人工知能(AI)が担う事で人件費を抑えることが可能になったからです。

これらのIT技術の導入によりコーヒーは高額で、行列に並ぶ必要があるという固定概念を覆し、低価格ですぐに商品を受け取ることができるといったユーザーの体験を向上させる事に成功しました。

さらにラッキンコーヒーはテンセントと業務提携を発表し、サービスの詳細はまだ明らかになっていませんが、スターバックスがAlipayでのスマホ電子決済サービスを導入するのと同様に、ラッキンコーヒーでもスマホ電子決済サービスを進めるのではないかと見られています。

(2)購買促進システムの実施

a.低価格
4-(1)インターネットを取り入れたサービスの効率化でも述べましたが、販売促進システムの1つ目はコーヒーの値段を低価格に設定できた事です。中国ではコーヒーは一般的に高い飲み物であると言われていましたが、ラッキンコーヒーの施策により値段を抑えれたので、中国人のコーヒーの購買意欲が高まったのではないでしょうか。

b.無料クーポン
2.ラッキンコーヒーのサービスを利用してみたでも述べましたが、2つ目は大量のクーポンが配布されているということです。「初めて買うときは無料」「2杯買うと1杯無料」「5杯買うと5杯無料」などのクーポンを時期に応じて文言を変えて配布されており、無料クーポンを配布する理由は、既にラッキンコーヒーを利用しているユーザーが新規ユーザーにコーヒーを奢ったりする事で、ラッキンコーヒーのコアユーザーが新規ユーザーを獲得するための広告になるといった理由もあります。

c.配達料金
配達料金は6元(100円)と安く、35元以上の注文で配達が無料になり半額になる割引サービスもあります。店舗から自宅までの配達時間は平均18分ですが、30分以内に届けることができなかった場合、賠償としてコーヒーチケットがアプリに配信されます。

5.まとめ

テーマを中国で大流行中のラッキンコーヒーとさせていただき、調査内容を「どのようにコーヒー文化を中国で創ったか」を設定させていただきました。

最終的に私は、コーヒー市場にIT技術(モバイルオーダー&ペイ・AI)を導入した事により実現したユーザーのスマートな体験(行列に並ぶ必要がない・低価格コーヒー)を提供した事とシェアを獲得するまで黒字を目指さずにクーポンを配布し続けるといったコーヒー市場のシェア獲得を最優先した事が中国でコーヒー文化を創った要因ではないかと考えました。

日本でも同様のサービスであるTOGOを大流行させるためにこの事を参考にし、日本でも新しいコーヒー文化を創りたいと思います。

この記事を書いた人中京大学法学部4年 神谷君

資料ダウンロードはこちら